情報サーバ |
関連情報 |
研究資料館 |
Internetと生命科学 ||
原生生物学図鑑
概 論 | 各 論 | 原生生物の進化 | 用語解説 | |
多細胞生物は個体レベルでは多様性を示すが,細胞およびオルガネラレベルではあまり違いはない。一方,単細胞の原生生物では以下のようにオルガネラレベルで著しい多様性を示す。
1 核の数と形
原生生物の核の数は細胞あたり1〜数百個と様々で,細胞分裂時に核膜の消えないものが多い。核酸の成分であるグアニンとシトシンの割合(GC含量)は,多細胞生物,特に脊椎動物では40%前後ほぼ均一なのに対して,原生生物は多様である。→核の形
2 鞭毛
鞭毛は,普通,直径0.2〜0.4μm前後で,長さはさまざまである。多細胞生物では,鞭毛は,精子にみられる程度だが,原生生物は多くの生物が生活史の全期間ないしは一時期に鞭毛をもつ。形態は,多細胞生物では単純な裸状だが,原生生物では多様で,一般的なものはむち型と羽毛型で,このほかに螺旋鞭毛,リボン形鞭毛などがある。トリパノソーマでは鞭毛は細胞膜によって覆われ鞭毛と細胞体との間に波動膜を形成する。
3 繊毛
繊毛は,繊毛虫のほかにヒトの気管・輸卵管の内側・ウニの幼生などにみられる。鞭毛よりやや細く,細胞表面に多数存在する。ゾウリムシでは,約10μmの長さのものが10,000〜14,000 本も存在する。繊毛は一般に規則正しく配列している。繊毛虫下毛類(正確には,旋毛綱のうちの下毛亜綱と棘毛亜綱)にみられる棘毛は,複数の繊毛が束になったもので囲口部の運動や,歩行運動などの機能を持つ。
4 仮足
仮足は肉質虫類と一部の鞭毛虫にみられる。葉状仮足・糸状仮足はアメーバに特有のもので,有孔虫にみられる網状仮足は,無数に枝別れしている。一般には外形が一定しないことがアメーバの特徴のように思われがちだが,移動時にみられる仮足の形などは種ごとに固有の特徴がある。軸足は太陽虫や放散虫(ポリキスティナ、パエオダリア、アカンタリアの3綱)に見られる半永久的な仮足である。
5 捕食装置
繊毛虫 ディレプツスの口吻や,吸管虫に存在する触手は捕食専用のオルガネラである。また,上記の仮足や軸足も,細胞の移動だけでなく捕食に役立っている。
6 突出体
多くの原生生物には,細胞表面に様々な突出体があり,接触その他の刺激によって内容物を突出させる。ゾウリムシには毛胞(トリコシスト)と呼ばれる突出体がある。静止時には2〜3 μmだが,刺激により細胞外に放出され内容物は20〜30 μmにも伸展する。ディディニウムの細胞先端部には長い線状の毒素胞がありゾウリムシなどを捕食するのに用いる。
7 細胞口と細胞肛門
繊毛虫では細胞表面にある細胞口から餌を食胞に取り込む。食胞内の未消化物は細胞口の後方にある細胞肛門から排泄される。
8 収縮胞
淡水性の鞭毛虫・肉質虫・繊毛虫にみられ,水の瀘過・排出により浸透圧を調節する役目を持つ。
9 ???
中には大変奇妙なオルガネラをもつものもいる。エリスロプシスは深海に住む渦鞭毛虫(渦鞭毛藻ともいう)の一種だが,細胞内にレンズとその底に色素を含んだ網膜のような構造がある。深海の少ない光を有効利用するために進化したのだろうか。その機能は謎である。