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2016.06.19, Part VII

遊々の森/奥の牧場(5)

次は奥の牧場の西側へ(八幡平市),11:47
前回は,黒滝へ向うルートの西側にある池を目指して,笹薮の中を歩いたが,結局,近付くことはできず, それらしい場所を遠くから眺めただけで終ってしまった。 しかし,そこには水面ではなくコケで一面が覆われていた。おそらく干上がってしまったと思われた。
とはいえ,黒滝へ向うルートの手前にもいくつかの池がある。 とくに前回,前々回は最初の頃に訪れた丸池もまだ訪れていないので,まずは丸池(仮称)へ。


2014年07月の様子(2014.07.06,12:21撮影)。

2013年05月の様子(2013.05.18,06:24, 12:23撮影)。

西へ向う途中にある浅い水たまり(八幡平市),11:47
ここは前々回(下段2枚目)は若干水があったが,前回(下段1枚目)は干上がっていた場所だ。 今回は水があった。最近,雨が降ったらしいので,その影響もあるだろう。 ここはしょっちゅう,水がたまったり干上がったりしている場所のようだ。
位置的にはこの後現れる丸池の北になる。


1枚目:2014年07月の様子(2014.07.06,12:22撮影)。
2枚目:2013年05月の様子(2013.05.18,12:23撮影)。

西へ向う途中にある浅い水たまり(八幡平市),11:49-11:50
1枚目:ここで 採集(遊々の森,奥の牧場-15)
2枚目:導電率は 13 μS/cm(29.9℃)。 水深が極めて浅いので水温が結構高めだ。
3枚目: pH は 4.55。

三日月池の北西側にある丸池(八幡平市),11:51
前回,前々回は三日月池を訪れたすぐ後に訪れた後, 今回同様,白樺池(もしくは樹林手前の池)を訪れた後,南西へ戻る途中にも訪れたが(計2回), 今回はこれが最初になる。


2014年07月の様子(2014.07.06,12:25-12:26撮影)。

2013年05月の様子(2013.05.18,06:24, 12:26撮影)。

丸池(八幡平市),11:51-11:52
1枚目:水底にはたくさんの枯葉(主に笹の葉)があったが,その表面が黒っぽい粒々で覆われていた。 最初は,腐食質が散らばっているのかと思ったが,ピペットで吸い込んでみると, 均一な円錐形のものがたくさんいた。皆動いている(2枚目)。 中には長く伸びているものもあった。色は濃い赤茶色だ。 これは,おそらく 共生藻を持つラッパムシ(Stentor fuliginosus) だ。 後で記録を確認したところ,S. fuliginosusは前回も,前々回もここで観察されていた。 ただし,今回は数が極めて多い(注)。

注:1枚目の画像をよく見ると,多くの赤茶色のS. fuliginosus(トランペット型)に混じって, わずかだが黄緑色で円錐形のものがある。 おそらくこれが Stentor pyriformis だ。
                ←動画(.mov)

丸池(八幡平市),11:53, 11:54, 11:55
1枚目:ここで 採集(遊々の森,奥の牧場-10b)
翌日,大学へ戻って観察したところ,多数のS. fuliginosusに混じって,細胞数はわずかだが,別の大型の 共生藻を持つラッパムシ( Stentor pyriformis or S. amethystinus,注1) がいるのに気づいた。 ここで,S. pyriformisが観察できたのは初めてだ(注2)。 今回採集した他のサンプルも探してみたが,S. pyriformisがいたのは,今のところ,この丸池サンプルだけのようだ。 S. fuliginosusはほとんどのサンプルにいた。一部はここと同じくらい細胞数が多いのだが,,。
S. pyriformisは,ここより南西にある 八幡平にある多数の湿原 で観察できている。 しかし,八幡平は標高 1500m前後あるエリアであり,他のS. pyriformisの存在が確認できた場所も 田代平湿原(標高 550-580 m,青森市)と 三ッ石湿原(標高 1281 m,八幡平市) 以外はすべて標高 1500〜2000 mにある。 それに対して,ここ(安比湿原/遊々の森/奥の牧場)の標高は 900 m余しかない。 近くにS. pyriformisが生息するエリアがあるとはいえ,標高の低いこのような場所で観察できたのはやや驚きだ(注2)。 やはり,ここは「牧場」というよりは「湿原」と呼ぶべきだろう。
2枚目:導電率は 9 μS/cm(26.4℃)。 背景に水底にあるササの枯葉が写っているが,その表面に多数の粒々が見える。 これらのほとんどがS. fuliginosusだ。導電率の測定器の周囲でもたくさんの S. fuliginosusが泳いでいるのがわかる。
3枚目: pH は 4.82。

注1:以前から培養しているS. fuliginosusと比べると,どうも微妙に異なることに気づいた。 もしかすると,S. fuliginosusに極めて似たS. amethystinusかも知れない。 両者の違いは,文献的には,色素の色がわずかに異なるのと,小核の周囲にその色素が集まっているか否かという,非常に微妙なものだ。 しかし,それ以外にも生きている細胞の形や遊泳の状態を見ると,かなりハッキリした違いがあることに気づいた。 これから詳しく違いを調べてみるつもり。
注2:数の割合は,S. fuliginosus 100匹に対してS. pyriformisは数匹程度。または,それよりも少ないかも知れない。 もともと数が少なかったのだが,全体にラッパムシの数が増えたため,S. pyriformisも観察できるようになったのか, あるいは,最近になって外から移入してきたのか,いずれかだろう。 とはいえ,他の池では見つからないので,ごくごく少数のままなのかも知れない。
標高の高い湿原(にある池塘など)では逆にS. pyriformisの方が優先種で,S. fuliginosusはごく少なめだ。 この違いは何なのか? S. pyriformisがより低温に適応しているのかと思えばそうでもない。 現在,私の実験室では室温(23℃)で元気に増えているからだ。 考えられるのは,標高の高い場所はそれだけ長い間,雪の下にあり,長期間餌の乏しい環境に置かれていると推察される。 S. pyriformisは細胞が大形なので,その分だけ長期間の飢餓状態,あるいは,餌の少ない環境に長い間耐えられるのかも知れない。 その一方で,増殖速度は,室温でも極端に遅い(すなわち,代謝が遅い,だからこそ飢餓にも耐えられるのだろう)ので, 標高が低く,雪解けもその分早い,このような場所だと小型で増殖速度の早いS. fuliginosusに負けてしまうのだろう。
注2:後日気づいたが,八幡平の秋田県側にある 大谷地(標高 1080,鹿角市)と, 大沼湿原(標高 950m,鹿角市) でもS. pyriformisが観察できていた。

安比高原 遊々の森,丸池(八幡平市),11:55
池端に生えていた植物たち。
1枚目: ヤチカワズスゲCarex omiana,カヤツリグサ科 スゲ属)
2枚目: ??

丸池(八幡平市),11:55-11:56
これは オオヌマハリイ(ヌマハリイ,Elecharis mamillata var. cyclocarpa,カヤツリグサ科 ハリイ属)
前回,西側に広がる笹薮の中を歩いた際,樹木の脇にあったわずかな水たまりでも観察した(下段)。 前回は時期的に今回より2週間後なので,花はほぼ終りかけていた。


2014年07月の様子(2014.07.06,12:40-12:41撮影)。

前方に奥の牧場の入口から黒滝へ向かう遊歩道?が見えてきた(八幡平市),11:57
道の中央に道標が立っている。

安比高原 遊々の森,奥の牧場(八幡平市),11:57
1〜3枚目:道標の前でパノラマ撮影。 1枚目:南側。前方に未舗装道(林道)側への出入口がある。往路はそこから入ってきた。
2枚目:道標。右奥(北)には「黒滝」があるらしいが,まだ訪れたことはない。
3枚目:前回はここを少し進んで,左(西側)の灌木地帯へ入った。 奥にあるはずの池を探すためだ。しかし,結局,それらしい場所は遠目に確認はできたものの, 途中で灌木に遮られて退却せざるを得なかった・・・。
ということで,ここでしばし考えた。当初は,昨年のことがあったので奥の牧場の西側には進まないつもりだった。 しかし,最初に訪れた長池のように,前回は薮で入れなかった場所が,道刈されて入れるようになっていたので, この辺も前回とは状況が変わっているかも知れない。 少しだけ西側へ進んでみることにした。


2014年07月の様子(2014.07.06,12:29撮影)。

2013年05月の様子(2013.05.18,06:24, 12:31撮影)。

道標の南側へ移動して北側を撮影(八幡平市),11:58
こちらへ向かって進む。

道を横切っている倒木を越えて進む(八幡平市),11:58

安比高原 遊々の森,奥の牧場(八幡平市),11:59
北へ向かって進む。 左になにやら笹が刈り払われたように見える場所があった。近付いてみる。

Part VIII: 遊々の森/奥の牧場(6)
2016.06.19, 11:59 - 12:10