1 原生生物の扱い方
1)採集方法
池や沼など淡水に生息する原生生物の採集には,コマゴメピペットなど大きめのピペットを用い,水底の枯草やドロなどを吸い取って持ちかえる。色々な場所からサンプルを採取するなら,フタがついて多少ゆすっても水もれのしない小形の容器を適当な数携帯する。
夏など気温が高い時期は,採集したサンプルがあたたまりすぎないような配慮も必要である。 一方,冬季でも凍結していない池などであれば,原生生物の採集は十分に可能である。水底にある枯草が混じったドロの表面などにはたくさんの原生生物が発見できる。
持ちかえったサンプルはできるかぎり早めに観察・記録・細胞の単離などの作業をすませた方がよい。時間経過とともにサンプル内の原生生物相が変化してしまうからである(死んだり,他の生物に捕食されたりすることがある)。
ただし,観察が終った後のサンプルや,一見何もいないようにみえるサンプルはすぐに捨ててしまわない ほうがよい。 なぜなら,上記のように,採集したわずかなサンプル中にも生物同士の食う食われるの関係(食物連鎖) があり生物相がつぎつぎと変化(遷移)していくからだ(早い場合は1日で変化することもある)。 また,多くの原生生物はシストと呼ばれる休眠状態の細胞になっているが,それらが しばらく放置すると「脱シスト」して姿を表すこともあるからだ。
時間経過とともに消えていく生物がいる一方で,最初の観察では 見つからなかったものが増殖して観察できるようになるのである(アメーバ類などは他の原生生物 を捕食して増えるので,他の原生生物が増殖した後で発見されることが多い)。
その際,サンプルに栄養分となるものを追加すると増殖が促進されて見付けやすくなる。 ただし,どのような養分を与えるかで出現してくる原生生物が違ってくる。なぜなら, 餌の好みは原生生物の種類によって異なるからだ。
たとえば,緑色鞭毛藻類の一種クロロゴニウムを加えると, これを餌とする原生生物が増えてくる(繊毛虫など)。 そして,さらには増えてきた種を餌にして他の生物が出現することもある(アメーバ類など)。
大形のアメーバであるアメーバ・プロテウスを見付けるには,繊毛虫の一種テトラヒメナを 加えるとよい。アメーバ・プロテウスはテトラヒメナを好んで捕食するので,次第に数が増え 発見しやすくなる。
あるいは,米粒などを加えてもよいだろう。その場合は,クロロゴニウムやテトラヒメナを与えた 場合とは異なる生物が増えてくることが期待できる(キロモナスなど)。
逆に,餌を加えずに,光だけを与えて,長期間放置すると,光合成によって増殖する藻類が多く みられるようになる。
できれば,同じサンプルをいくつかに分けて上記のような様々な条件で様々な原生生物を増殖させ ればよりたくさんの種類を観察することができる。
その一例はここ (1サンプルから150種以上!)で紹介している[ 読み終ったら で戻ってください]。
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